「素敵なカフェを見つけたんだ。」
15分の短い休み時間、机に突っ伏した僕の前に立ったのは友人の凜壱だ。
澄んだ顔に柔らかな笑みを浮かべながら、彼が僕の席にやってきたのは先週の事だった。
なんでも、僕らの通う学校の二駅先で、偶然にも発見したらしい。
凜壱と僕は、カフェ巡りをするのが趣味で、最近それを知ってからというものの、新しいカフェを発見すると二人で出掛けるようになった。
勿論僕は二つ返事で了解し、月曜の放課後に行くことになった。
当日僕がすこしだけ遅れて行くと、改札の前にはゆるいセーターを着た凜壱が立っていて、僕が駆け寄ると顔をあげて笑顔になる。
「お待たせ!」
「ゆき。」
――凜壱は僕の雪兎という名前をゆき、と呼ぶ。あだ名というやつだ。
「そのカフェは30年以上そこにあるんだってさ。」
「ついでに、陶画舎にも寄っていいかな。いきつけなんだ。」
ごちゃついた通りを駅から歩くこと5分程。
赤いリボンの黒猫の看板が、[レヒドール]の目印だ。
流石は30年以上の歴史をもつだけあって、テラスから蔦が溢れるようにして蔓延っていた。
煉瓦作りの階段を上ると、木の扉の前に[レヒドール]と型抜きをしたブリキの看板がある。
からんからん、やさしい音のベルを鳴らして僕らが店の中にはいると、テーブルも椅子も木の素材が殆どで、やわらかい空気が迎えてくれた。
「どうぞお好きな処へ。」
オーナーらしき男性は、珍しい暖色系のギャルソンスタイルで微笑んだ。
「奥さんも素敵な人なんだよ」と凜壱がささやく。
一番大きな窓辺にある席につくと、差し出されたメニューには紅茶の種類が所狭しと書かれていた。
「チーズケーキと紅茶を。」
「チーズケーキとカモミールティーを。」
注文を終えると話題は学校のセーターについているエンブレムの話だとか、輸入菓子の話だとかになる。
3食ドーナツでいけるだとか、ルビィシュガーを自分で作れないかだとか、
ロータスクッキーは沢山食べられないとか、コーヒーフレーバーの話だとか。
最近凜壱がVillageVanguardに入り浸っている話、
沢山話をした。
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[レヒドール]
原宿竹下通り徒歩5分
・チーズケーキ&紅茶 900円
・チーズケーキ&カモミールティー 950円
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これはマズいですよ(笑)
素敵な「少年生活」。